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なぜ、ブリスター包装での溶着不良が起きるか? その2 〜原因と対策〜

前回に引き続き、今回はブリスターの溶着不良についての話題 その2としてお伝えしますね。

こんにちは、大阪・柏原でブリスター包装機をオーダーメードで手掛けています。 ブリスターパック・ラボ、担当のけたろーです!

受託包装を絶賛承り中です!。 お気軽に!

さて…

ヒートシールの基本的な要素。

前回のおさらいは、こちらから。

そもそも、熱溶着… つまり、ヒートシールにおける基本的な要素をご存じですか? ヒートシールを行う上での基本的な要素は、3つあります。

それは、

(ア)圧力・(オ)温度・(ジ)時間

です。  

ちなみに、覚え方は、『アカジ!』 じゃなく、『アオジ』。 でもこれ、すごく重要なので、覚えておいて損はないですよ。 ちなみに、〝アオジ〟という順番で書きましたが、優先順位から言えば、ホントは〝オジア(温度・時間・圧力)〟の順です。 〝アオジ〟 の方が語呂がよかったので。笑

さて…

圧力に関しては、前回のログで書いたとおり、表面を均し、部材同士を密着させるために必要な要素だとお伝えしました。

でも、圧力が高けりゃ高いほどいいか? と言えばそうでもないのです。

高圧による弊害。

ちなみに、溶着の目的は、その名の通り 〝溶着〟することであって『圧着』ではありません。 なので、本筋から言えば、圧力はそこそこと… いう感じになります。 

必要な圧力は一度に取り扱う個数にもよりますが、製品単体で考えると平版で使う装置のような〝数トン〟もしくは、〝数十トン〟という圧力は要らないのです。 それに、過度な圧力は型を傷めてしまう可能性があるため、注意が必要です。

平版方式では、一般的には、ベニア板を積層させて作った〝木型〟を使います。 木型は、数トンの圧力と百数十度という温度に毎回さらされます。 同じ製品を溶着しているのにも関わらず、溶着の不良が増えてきたという場合には、木型自体がまずくなってしまったということも挙げられます。 

木型は、高温・高圧な状態を繰り返し受けるため、その状態管理も重要なポイントになります。

溶着することを考える。

ちょっと話がそれましたが… 説明を続けますね。 

圧力の他に重要なのが、塗布されたホットメルト剤を適正に溶かして(温度)、それを適正に保持する(時間)です。

ところで、接着剤を使って、モノAとモノBをくっつける場合を考えたとき、モノAとモノBは、なぜくっ付きますか? 

この時って、接着剤がモノAとモノBをくっつけますよね? 当たり前のことなのですが、何も塗ってない状態ではくっつきませんよね? これは、ヒートシールでも同じなのです。 

ヒートシールだから! と特別に難しく考えることはなく、理屈は同じです。 この時重要なのが、温度と時間のバランスなのです。 温度と時間を決めた上で、圧力というイメージです。

では、なぜ?

このことをを踏まえた上で、では、なぜ溶着不良が起きるのでしょうか? 主たる原因は、4つです

1.ホットメルト剤が溶けていない。
2.保持時間が足らない。
3.ホットメルトと部材の相性が悪い。
4.台紙の保管管理がまずい。

ということです。 

原因は簡単でしょ? では、もう少し詳しくお伝えしますね。 まず、1から。

原因その1; ホットメルト剤が溶けていない。

ヒートシールを使ったブリスター包装の基本は、台紙に塗布されたホットメルト剤を熱で溶かして、それを接着剤として台紙とブリスター(容器)をくっつけるということです。 

つまり、接着剤にあたるホットメルト剤が適切に溶けていないとくっつかないのです。 この問題を回避するためにどうすればいいか? と言えば、塗布されているホットメルト剤の溶解の温度帯を知ることがポイントになります。

では、それをどうやって知るか? と言うと、台紙を購入した仕入先から情報を聞き出すのが一番手っ取り早いです。 

何度くらいで溶けるメルト剤を使ってるの?

と、まず、それを教えてもらい、温度設定を行います。 「溶ければいいから高温でいいや!」などとやみくもにやってしまと、ホットメルトが沸いて、接着力の低下を招いてしまう可能性がありますので、くれぐれも注意ということで。

原因その2; 保持時間が足らない。

2つ目は、1とも関係しています。 保持する時間というのは、設定した温度でホットメルトが溶けだすために必要な時間です。 なので、同じ温度条件の中で、例えば、1秒で処理した場合と2秒の場合、3秒での場合など、時間を変えて処理してみてどうなるか? を確認してみるということです。

仮に、1秒で着かなくて、時間をそれより長くして着くのであれば、それだけ時間が必要であるということが言えます。 

つまり、保持した時間内でホットメルトが溶けるかどうかがポイントになるということです。 もし、保持時間を短縮させたいのなら、少し温度をあげて試してみるというのも一考です。 

原因その3; ホットメルトと部材の相性が悪い。

3番目は、台紙表面の印刷に使用されているインクや台紙の紙質に大いに関係していて、また、台紙に対するホットメルトの加工方法にも関係しています。 

接着剤を使ってモノAとモノBを接着させる場合、重要なのは、部材に対して接着剤が適切に綺麗に塗られていること… ですよね? それに加えて、使用する接着剤の性質と接着するモノA、Bとの相性というのがあります。

例えば、モノAとBがゴムだったとして、そこに木材用途の接着剤を塗った場合、どうでしょうか? つかないですよね? ヒートシールの場合もそれと同じです。 

ここでのポイントは、台紙(基材)とホットメルト剤の親和性… 端的に言うと、相性です。 ホットメルト剤が塗れたとしても、剥がれやすい状態の基材の上に塗られているなら、接着効果も弱まってしまうというわけです。 

それに影響を与えるのが、〝台紙そのものの質〟と、〝印刷時のインクの種類〟です。 

台紙の紙質は悪い方がいい。

まず、台紙の質について。

最近の(デザイナーの)志向として、ブリスター用の台紙には上質な紙が好まれるようになってきている感があります。 デザイナー目線で言えば、上質な紙を使う方が質感もあって、訴求効果が高まる… だから、それを採用する… ということが言えるのでしょうけど。

でも、注意したいのが、含浸性です。 含侵性とは、ホットメルトの台紙への浸透のことです。 塗布されたホットメルト剤が台紙に十分に浸透していないと溶着性能としては低くなります。 見かけ、くっ付いているように見えるのだけど、実際には着いていないという状況がそれです。

上質な紙は、含浸性(浸透性能)が悪く、ホットメルトが浸み込まず〝表面にのってる〟だけの状態になるため、その点をケアした方がいいです。 ちなみに、溶着で考えると上質紙よりも古紙系の紙質が向いています。 古紙の場合、紙の繊維目が粗く均等ではないので、繊維の奥までホットメルト剤が浸透しやすいのです。 つまり、溶着強度が増すということです。

塗布工程も。

台紙の加工では、ホットメルトの塗布のあと、その乾燥の工程があります。 最近では、処理時間短縮のため、乾燥炉などが使われる場合が多いようです。

乾燥時間は台紙への染み込みにも影響を与えます。 乾燥時間が十分でない場合、上質な紙の場合と同じく〝表面上だけ〟になってしまって、台紙と容器が剥離しやすい状況を生んでしまいます。

インクの種類。

次に、インクの種類について。

使用されるインク色とホットメルト剤には相性があり、ホットメルト剤となじまない組み合わせが存在しています。 例えば、クロとか、ミドリとか、キとか… がそれです。 

インク(顔料)の成分がホットメルトを弾いてしまい、台紙に浸透しない場合があるんです。 もし、台紙のデザインの中で溶着具合に差がでるようなら、インクが原因になっている場合が多いです。 

その場合には、使用するインクの色、または種類を変えることで対処できます。 台紙メーカーに事情を伝え、対応を乞うのが一番の対処方法です。

原因その4; 台紙の保管管理がまずい。

台紙の保管状態も溶着不良の原因に関係する場合があります。 例えば、たまにしか使わない台紙などの場合がそれです。 

保管の状態がまずいと、塗布したホットメルトが劣化し、溶着しにくくなってしまいます。 また、保管している温度や湿度によって、ホットメルトの性質に影響を与えることもあります。 なので、台紙の保管管理は適正に行うことを強くお奨めします。

それでもダメなら…

上記の対応をしてみて、それでもダメなら… 

ブリスター(容器)がマズイのかもしれません。 それは、不良の条件としてブリスター容器とホットメルト剤の相性も否めないからです。

材質に依るところ。

一般的に、ブリスター包装に用いられる容器の材質から言えば〝G-PET〟がよいとされています。 次いで、A-PET(バージン) です。 昔は塩ビが主流で、溶着不良も出にくかったと聞きます。 それに塩ビでは、割れに対するリスクもなく良好な素材だったのですが、環境の面から敬遠されるようになりました。 いわゆる、ダイオキシンの問題からです。

再生PETが用いられている場合、経験上、溶着性が期待できない場合が多いです。 恐らく、不純物で何かしらの影響がでるのかもしれません。 また、最近流行の環境に配慮したと言われる植物由来の〝バイオマスPET〟も、溶着にはあんまり適しているとは… 

加工精度や管理に依るところ。

材質に加えて、容器そのものの加工精度や、容器の管理も関連してきます。 

真空成形時の真空引きが甘く厚みにバラツキがあるとか、容器に変形がある場合など、そういったことも溶着不良の要因になりえます。 変形については、容器が完成した後の管理面での影響が関係する場合があります。 容器の設計形状によりますが、変形しやすい形状があるのも事実としてあります。 

なので、台紙と同じく容器も徹底した管理を強くお奨めします。 

単価に依るところ。

もう一点付け加えるとするなら、容器の単価です。 単価を抑えて購入している場合、資材メーカー側で〝無理〟が生じる可能性が高いのです。 

単価がこれなんだから、この程度でええやん。

という心理が働くのです。 それで単価に見合うように、どこかで手を抜いているという… 実際、そういった話を聴いたことがあるので、残念ながら、現実的にあると思って頂いてOKです。 とはいえ、その価格で受けた以上のことをするのは当然だとは思うのですけどね… 

ともあれ、容器メーカーからの受け容れ時にはしっかりとした品質検査や確認を行うことをお奨めします。 

その他。

その他の要因として、ブリスター包装機の機械的な面で言えば、

ヒータープレートの面のバランスがでていないとか、ヒータの断線などで温度管理ができていないとか、溶着時の押し圧が足りていないとかと言ったことが考えられます。 その他には、溶着時の受け型の変形や劣化、ヒータプレート自体の損傷や劣化なども要因として挙げられます。

また、押し圧に関して言えば、その推力としてエアーシリンダを用いている場合、工場内のコンプレッサの能力が関わっている場合があります。 エアー配管の同一のルート上でエアー消費の激しい装置が稼働している場合、そこでエアーが消費され、ブリスター包装機側のエアシリンダに十分な推力が得られないといった現象が起きます。

この場合には、工場内のコンプレッサの能力を見直しなどを行うことが必要になります。 

推力として油圧を使用している場合では、油圧用のオイル量が適正でない、あるいは、経年でオイルの劣化があると言ったことが考えられます。 

加えて、ブリスター包装機自体の経年劣化によることもあります。 搭載している器材にも当然、寿命があります。 内部的なパーツの劣化、例えば、エアーシリンダなどでは内部のパッキンが劣化し、エアー漏れが起きて、想定の推力が得られないというケースがそれです。 

機械については、日々のメンテナンスが重要です。 こと、包装作業は日常的に行なわれる場合が多いため、普段とは違う状態を感じたら、直ちにその原因を突き止め、対処するといったことが重要です。

普段使いではなく、たまに使用するといった場合には、装置起動後、いきなり使い始めるのではなく、ある程度のアイドル運転を得て、具合を確認した上で使用を開始するといった配慮が望ましいです。


溶着不良が起きる場合、問題を難しく捉えないで、まず、シンプルに原因を捉え、順番に対処していくのがベターです。 それでもダメなら、お近くの業者にご相談ください。


修正・加筆 2024/06/19


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Written By

けたろーのアバター けたろー 包装機械相談士/時短設計®士。

包装機械相談士。時短設計®士。 先代よりブリスター包装機と関わり約40年余り。『人海的な手作業』が主流のこの包装業態に風穴をあけるべく、もっとブリスター包装機械のことを知ってもらいたくてこのサイトを立ち上げました。包装作業は毎日のことなので、なるべく、その負荷を減らせるようできればと思ってます。 人手不足や働き方改革が叫ばれている昨今。何かのきっかけになれば幸いです。 あなたの生産現場が、最高最善にハッピーになれますように。(*^-^)