PPWRでの適用がはじまったことを受けて、ブリスターパック・ラボでは、3回シリーズでお伝えしたいと思います。
シリーズ1回目:PPWRはもう始まっている。2030年まで、包装に残された時間は意外と短い
シリーズ2回目:減プラだけでは決められない。PPWR時代の包装に「防犯」という視点
「うちはヨーロッパへ輸出していないから、PPWRは関係ない」
そんな風に考える会社さんも多いと思います。
こんにちは。
大阪・柏原市で、現場に合わせたブリスター包装機づくりをしている、ブリスターパック・ラボのけたろーです。 ここでは、ブリスター包装や周辺工程のことをできるだけわかりやすく書いています。
さて、今回の話題は…
欧州へ輸出しないから関係ない?
PPWRはEUの包装・包装廃棄物規則なので、日本国内だけで販売する商品にもPPWRがそのまま適用されるわけではありません。
では、日本国内の包装はこれまで通りでいいのか? というと、ボクは、そう単純でもないと思っています。
今回のシリーズでは、PPWRの現在地、そして減プラと防犯性能について考えてきました。
シリーズ3回目の最終回では少し視点を日本へ戻します。 欧州で始まった変化を、日本の包装業界はどこまで意識する必要があるのか? そして2030年へ向けて、いま何を考えておけばいいのかを考えてみます。
日本にPPWRが適用されるわけではない
まず、ここは分けて考える必要があると思ってます。
PPWRが直接対象とするのは、EU市場へ投入される包装です。 したがって、国内で製造して、国内で流通し、国内で消費される商品であれば、「2030年までにPPWRへ対応しなければ販売できなくなる」ということではないです。
ここを必要以上に煽るべきではないとボクは思っています。
ただ、国内外での規制の話と、包装が向かう方向まで違うことは別の話です。 日本の制度を見てみると、実はPPWRと共通する方向がかなり見えてきています。
日本でも「捨てた後」を考えた設計が始まっている
欧州での環境問題についての潮流は、当然、日本にも波及しています。 日本では、プラスチック資源循環促進法に基づいて「プラスチック使用製品設計指針」が示されています。 そこには、こんな考え方が示されています。
- プラスチック使用量を減らす
- 包装を簡素化する
- 単一素材化する
- 使用する素材の種類を減らす
- 分解・分別しやすくする
- 再生利用しやすい材料を使う
- 再生プラスチックを利用する
つまり日本でも、「使い終わった包装を、そのあとどう処理できるのか」まで考える方向へ変わっています。
さらに2026年には、この考え方が制度として実際に動き始めました。 文具、清涼飲料用PETボトル、家庭用洗浄剤容器、家庭用化粧品容器について設計認定制度が始まり、2月には初めて41件が認定されています。
例えば家庭用化粧品容器では、再生材の使用、無着色PET、単一素材化、分別しやすい設計などが評価されています。 これはPPWRと同じ制度ではありません。 しかし、目指している方向には共通点があります。
大手だから対応するとか、中小だから免責されるわけではなく、『地球の環境』を考えれば、当然の流れだと、個人的には思ってます。
日本も「減プラだけ」では終わらないのではないか
日本では、ブリスター包装からシュリンク台紙のような『減プラ包装』へ変更される商品が増えてきました。 特に化粧品や日用品では目にする機会が多くなっていますし、カートンのような紙の包装形態に変えているところも増えています。
ブリスター包装で言えば、ブリスター容器を、薄いシュリンクフィルムへ変える。 もしくは、紙ブリスターと言われる紙製の容器に変える。 これはプラスチック使用量を減らすという意味では、とても分かりやすい方法です。
資材費の削減にもつながる場合があります。
ただ、前回の記事で触れたように、包装には環境性能だけではない役割があります。
- 商品を守る。
- 改ざんを防ぐ。
- 盗難を防ぐ。
- 運びやすくする。
- 売場で扱いやすくする。
PPWRでも、盗難防止や改ざん防止は、包装に必要な機能として考慮されています。 つまり、プラスチックを減らしたから、それだけで良い包装になったとは限らないんです。
加えて、PPWRでは、使用後のリサイクルが行われやすいように、分離性能がうたわれています。 紙に変えたからいいのか?といえば、紙単体では防水性能に劣るため、フィルムのラミネートなどの処置が施されています。
分離性能を考えるうえでは、この点が指摘される可能性もあるということです。
日本でも、これから同じ議論が出てくるのではないでしょうか?
「ブリスターをやめる」が答えなのか
環境対応を考えると、「ブリスター包装はプラスチックをたくさん使うから、別の包装へ変えよう」という話になりがちですし、実際、シュリンク台紙や紙ブリスターへの切り替えをみていると、うなずけます。
ただ、ブリスター包装にはブリスター包装の優位な特性があります。
- 商品が見える。
- 形を保持できる。
- 吊り下げ陳列できる。
- 商品を保護できる。
- 簡単に中身を抜き取られにくい。
- 比較的コストが包装が安い。
商品によっては、これらが重要な機能になっています。 また、資金力のある会社なら、包装形態を変えて対応することも容易なのでしょうけど、そうでない場合は、難しいです。
こと、使用している包装機械への問題があります。 包装形態を変えるとなれば、現状の機械も変更する必要が生じます。 商品への品種が多い場合、新しい包装形態への切り替えは、かなりの労力を要します。
であれば、ブリスターをなくすことだけを目的にするのではなく、ブリスターをどう変えていくかという考え方があってもいいはずです。
現在の問題は、紙とプラスチックが一体になっていること
一般的なヒートシール(溶着型)ブリスターでは、透明なプラスチック容器と、ヒートシール剤を塗布した紙台紙を、熱で接着します。 包装としては非常に合理的で、且つ、防犯機能もあります。
しかし、『使い終わった後』を考えると問題があります。
紙とプラスチックが強く接着されているため、消費者が簡単に分けられないのです。
プラスチック側に紙が残る…。 包装として一体化していることが、廃棄時には弱点になります。 この点に関しては、かなり以前から指摘されてきました。
包装現場からみれば、輸送時や店舗での陳列時で、剥がれてしまうリスクを考えれば、『より強固な接着』が望まれ、「剥がれないこと」が包装性能でした。 ところが資源循環を考えると、「最後には分けられること」も性能になってきます。
ここが非常に面白いところだとボクは思っています。

だからといって、最初から簡単に剥がれてはいけない
一方で、「分別しやすいなら、最初から簡単に剥がれるようにすればいい」という話でもありません。
店頭で簡単に剥がれてしまえば、商品保持という包装本来の機能を失い、盗難防止性能にも影響します。
必要なのは、輸送や販売している間は、しっかり包装されていること。でも、使用後には、紙とプラスチックを簡単に分けられること…。 この二つを両立させることです。
一見すると矛盾しています。 でも、これからの包装には、こうした考え方が求められるのではないかと思います。
そこで提唱しているのが「台紙の二重化」
ボクらが現在提唱している方法が、ブリスター包装の台紙を二重構造にすることです。
現在の溶着タイプのブリスターでは、ブリスター容器を、商品情報が印刷された台紙へ、直接ヒートシールします。 なので、分別の問題が生じます。
台紙を二重化すれば、ブリスター容器を直接台紙に貼り付ける必要がなくなります。 これによって、包装として必要な接着強度は確保しながら、使用後には紙とプラスチックを分けやすくする。
そんな構造を作ることができるんです。 さらに、この方式にはもう一つ意味があります。
ブリスター容器側の素材選択肢が、広がるということです。
従来は、「台紙へ溶着しやすいプラスチック素材」という条件で材料を選んでいました。 例えば、A-PETやG-PETがそれです。 再生PETは溶着しづらく、作業性や、のちのトラブルリスクを考えると、敬遠される材料でした。
この点、台紙を2重化することで、再生材でも、バイオ系でも、従来より台紙との溶着には不向きと言われていた素材を選ぶことができます。 つまり、素材への選択の自由度があがるのです。
台紙二重化が「正解」と言いたいわけではない
一方で、この方法が正解であるか? と言われると、そうではないです。 あくまで、方法のひとつである…。 ということです。 現時点で、「台紙二重化ならPPWRに適合します」とは断言できません。
PPWRのDesign for Recyclingに関する詳細な評価基準には、まだ今後定められる部分があるためです。
また、日本国内でも商品や流通方法によって最適な包装は違います。 シュリンク台紙が適している商品もあるでしょうし、紙箱が適している商品もある。スライドブリスターで十分な商品もあります。
そもそも外装包装をなくせる商品もあるかもしれません。
だから台紙二重化を、すべてのブリスター包装の答えにするつもりはないです。 ただ、ボクらが提唱しているのは、ブリスター包装を残す必要がある商品のための、一つの選択肢としてのご紹介です。
では、2030年までの時間をどう使うか?
あるメーカーの担当者と話をしていたとき、「2030年を考えると、あまり時間がない」という話がありました。
実際に包装を変更しようとすると、
素材を探す、試作品を作る、包装テストをする、耐久試験や輸送試験をする、保存性を確認する、量産設備で試す、販売部門や海外拠点と調整する、必要なら設備を改造する…。
そういう工程を経て、量産へ移ります。
そんな風に考えていくと、2030年までは、そんなに長くはないです。
ただ、冒頭にも書いたように、国内向けしか扱っていない企業まで、「すぐにPPWR対応を始めなければ」と考える必要はないと思っています。 むしろ、これを機会に、今使っている包装を一度見直してみる…。ということも一考だと思います。

マイルストーンの例。
- 今使っている容器は何の樹脂なのか?
- 台紙には何が塗られているのか?
- 使用後に紙とプラスチックを分けられるのか?
- なぜその包装形態が必要なのか?
- 本当に今のプラスチック量(厚み)が必要なのか?
- 素材を変更すると、今の設備で包装できるのか?
こういったことを一度、整理してみる。
代替素材や代替構造を試してみる時期として、いろいろな可能性を探る。
欧州のDesign for Recyclingの具体的な基準や、日本国内の制度・市場動向を見ながら候補を絞る。
実際の製品と設備で量産テストを行う時期。
すでに選べる状態になっている理想の状態。
これくらいの時間軸で考えても、決して早すぎるとは思わないです。 土壇場でバタバタするよりも、ある程度ゆとりを持って臨む方が、対策としてはスムーズだと思います。
もちろん、これはあくまで包装変更に必要な時間から逆算した、一つの実務的な目安のマイルストーンです。 商品や業界によっては、もっと早く動く必要があると思います。 逆に、対象外となる包装や例外規定が適用されるものもあります。
重要なのは、「2030年だから2029年に考えよう」と呑気に構えないことです。
欧州へ輸出するかどうか? だけの話ではない
PPWRそのものは、欧州の規則です。 しかし、
- 減量化。
- 包装の簡素化。
- 単一素材化。
- 分別のしやすさ。
- 再生材の利用。
- リサイクルしやすい設計。
こうしたことがらは、日本でもすでに始まっています。
日本政府のプラスチック資源循環戦略でも、2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリユースまたはリサイクルすることなどを目標として掲げています。
2026年の今、「EU向け商品だけ考えておけばいい」というより、これから新しく作る包装を、従来とまったく同じ考え方で作り続けていいのか? そこを考える時期に来ているように思います。
包装を「変化に対応できるもの」へ
規制がどう変わるか? 材料事情がどう変わるか? 再生材がどこまで普及するか? 日本の制度がどこまで欧州に近づくのか…? まだまだ、分からないことはたくさんあります。
だからこそ、将来的な流れをみながら、自社としてどうしていくかということを考えていくことが大事なのだと思います。
台紙の二重化も、そのために考えている一つの方法です。
紙とプラスチックを分けやすく、使うプラスチックも選びやすくする。 これは、PPWRへの対応だけに限ったことではないです。
『包装』ということを考えたとき、社会環境や利用者へのことももちろんのこと、包装の作業現場で対応してくれているスタッフのことも考える必要があります。 どれだけ優秀な包装であったとしても、それにかかる作業負荷が大きければ、どうなんだろう? と思うのです。
環境や利用者に対してもやさしく、また、作業を行うスタッフに対してもやりやすい包装の形。 ボクらは、そんな位置づけで考えています。
2030年に何が正解になっているのか? それを今、完全に予測することはできません。 でも、動向を見ながら、対策や対応を考えていくことはできます。
もし、今お使いのブリスター包装について、「このままでいいのか」「他にどんな選択肢があるのか」と感じている部分があれば、まずは今の包装の状態を聞かせてください。
台紙の二重化に限らず、商品やご事情に合わせて、一緒に選択肢を整理するところから始められます。 PPWRは、そのことを考え始める一つのきっかけになると思います。
このシリーズの内容をまとめて読みたい方は、こちらの特集ページもあわせてどうぞ。
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