PPWRでの適用がはじまったことを受けて、ブリスターパック・ラボでは、3回シリーズでお伝えしたいと思います。
(シリーズ1回目:PPWRはもう始まっている。2030年まで、包装に残された時間は意外と短い)
日本の店頭を見ていると、ここ数年で包装がずいぶん変わってきたのを感じてます。
特に化粧品や日用品では、それまで硬質のブリスター容器に入っていた商品が、紙台紙と薄いシュリンクフィルムを組み合わせた包装へ変わっているパターンをよく目にします。 いわゆる「シュリンク台紙」です。
こんにちは。
大阪・柏原市で、現場に合わせたブリスター包装機づくりをしている、ブリスターパック・ラボのけたろーです。 ここでは、ブリスター包装や周辺工程のことをできるだけわかりやすく書いています。
さて、今回の話題は…
PPWR時代の包装に「防犯」という視点。
紙台紙の片面に筒状のシュリンクフィルムを取り付け、その中へ商品を入れ、熱収縮させて商品を保持する。
硬質のブリスター容器を使わないため、プラスチック使用量を大幅に減らすことができる。 ブリスター包装と比較すると、減プラという観点では、とても分かりやすい包装で、且つ、包装コストも安くなることから、かなり、この形態に置き換わった気がします。
では、この包装をそのまま欧州へ持っていけるのか? この点が気になって、少し調べてみました。 ここを考えていくと、日本と海外の包装に対する考え方の違いが見えてきます。
日本の包装形態では「簡単に開けられるもの」が比較的多い。
たとえばスライドブリスター。 スライドブリスターとは、透明容器と台紙を溶着せず、台紙をスライドさせれば商品を取り出せる包装です。 工具類などで多く採用されています。 専用の機械がなくても、包装が簡単にでき、見場もいいことから、広く使われています。
日本では、こうした「開封しやすい」包装でも普通に店頭販売されています。
もちろん店舗や商品によって事情は違いますが、「客が売場で包装を開け、商品だけを持ち去る」ことを最優先に考えなくても販売できるケースが、比較的多いからこそ成立する包装とも言えます。
これは、日本独特の国民性と、安全な環境を背景にした、“開けてまで盗らないだろう” という性善説にもとづいた包装形態であると言えます。
一方、海外の小売包装では、防犯性能が重要な設計条件になっています。
商品を簡単に抜き取れない。開封すれば痕跡が残る。包装そのものをある程度大きくして、ポケットへ入れにくくする。 溶着型のブリスターやクラムシェルが使われてきた理由には、こうした役割もあります。
うちの経験なのですが、以前、
商品の海外展開に際して、スライドブリスターでは海外の店頭では置くことができない。 盗られやすい包装を採用している場合、企業側の責任が問われるので、溶着タイプのブリスターにしたい。
とのことで、相談を受けたことがあります。 お客が抜き取るというリスクのほかに、スタッフが抜き取るというリスクもあると言われていました。 日本の常識は、海外では通じないということです。
PPWRにも「盗難防止」が書かれている
ここでPPWRを見ると、興味深いことが分かります。
PPWRでは2030年から、包装の重量や体積を「機能を維持するために必要な最小限」にすることが求められます。 ところが、その包装機能を判断する基準の中には、以下のようなものまで明記されています。
- anti-tamper(改ざん防止)
- anti-theft(盗難防止)
- anti-counterfeit(偽造防止)
つまりEUは、「環境のためなら、とにかく包装を減らせ」と言っているわけではなく、必要な防犯性能は維持しながら、無駄な包装を減らす。 ここが重要なところだと思っています。

シュリンク台紙の弱点
シュリンク台紙には、ブリスターに比べてプラスチック量を大幅に減らせるという大きなメリットがあります。 その一方で、構造上の弱点もあります。
シュリンクフィルムは紙台紙に接着されています。 その接着部へ力を加えると、条件によっては台紙とフィルムを容易に剥離させることができてしまうのです。 また薄いフィルムなので、硬質のブリスターや溶着クラムシェルに比べれば、商品へのアクセスは容易です。
海外特有の治安のことを鑑みれば、台紙から商品だけをもぎ取る… ということが想定できます。
ここで一つ断っておきたいのですが、「だから海外ではシュリンク台紙が採用されない」と断定できる資料は、現時点では確認できていません。
あくまで構造と海外小売の防犯事情から考えた、ボクなりの仮説です。 ただ、減プラだけを評価すれば有利。防犯まで含めると話が変わる… ということは確かだと思います。
もう一つ気になる「二重包装」
化粧品を例に考えてみます。
商品そのものは、すでにボトルやチューブなどの「一次容器」に入っています。 その外側にシュリンク台紙を付けて売る。
つまり、商品容器+店頭陳列用包装という二段階(二重包装)になっているわけです。
もちろん、二重包装だからPPWRで禁止されるわけではありません。 PPWRでも、商品保護、安全性、改ざん防止、盗難防止など、必要な機能があれば包装は認められています。
問題は、「二重の包装は何のためにあるのか」を説明できるかどうかです。 例えば、
- 商品を守る。
- 改ざんを防ぐ。
- 盗難を防ぐ。
- 必要な情報を表示する。
- 物流で破損しないようにする。
そうした明確な機能があれば合理性があります。
一方で、一次容器ですでに商品は保護されていて、外側のフィルムは簡単に外せる。 盗難防止にもあまりならない。 主な目的は吊り下げ陳列と売場での見栄え。となったとき、PPWRの包装最小化という考え方の中で、将来どこまで評価されるのか…。
ここは考えておく必要があると思います。
実際、PPWRの2026年ガイダンスでも、「マーケティング」や「消費者受容」は、余分な包装重量・体積を正当化する理由から外されたことが説明されてます。
「ブリスターからシュリンク台紙へ」が世界共通とは限らない
日本では、ブリスター ⇒ 減プラのムーブメント ⇒ シュリンク台紙、という流れが成立しています。 恐らくこれは、国内での安全性が担保されているから成り立っていることなのだと思えます。
一方、欧州では、ブリスター ⇒ PPWR ⇒ シュリンク台紙、という流れは容易ではないと思われます。 なぜなら、欧州側から見れば、「プラスチックは減った。でも防犯性能まで落ちた」という懸念があるためです。
そう考えると、欧州で求められる次の包装は、プラスチック使用量を減らしながら、店頭で簡単には開けられない包装かもしれないです。
一見矛盾する二つの要求
ここで面白い問題が出てきます。
PPWRのリサイクルを考えるなら、紙とプラスチックは分けやすい方がいい。 しかし盗難防止を考えるなら、店頭では簡単に分離できない方がいい。
つまり、「分けやすくしてください」と「簡単に開けられないようにしてください」を同時に求められることになる…。
矛盾しているように見えますよね?
しかし実際には、『購入前には開けにくく、購入後、正しい方法なら分けやすい。』という包装設計ができればいい…。
ブリスター包装に限らず、これからの包装は、この考え方が重要になるのではないか、とボクは思っています。

「減らす」から「どう終わらせるか」へ
環境への対策として、これまでは「プラスチックを何%減らしました」という説明が分かりやすかったと思います。もちろん、それも大切です。 なのですが…。 PPWRを見ると、評価軸はその先へ進んでいます。
少ない材料で包装する。必要な機能は残す。使用後には材料ごとに分け、回収・選別できる。再び材料として使える。
つまり、単なる包装だけではなく、「使い終わったあと、どう終わらせるか」まで設計する。 …そこへ変わりつつあるということです。
ブリスター包装についても、『プラをたくさん使ってて、分別しにくいからやめる、または、そのまま続ける。』という二択ではなく、むしろ、ブリスターという包装形態の中で、どこまで材料を減らし、素材の自由度を持たせ、最後に分別できる構造にするか…。 そこがこれから求められるポイントかな、とボクは考えています。
次回は、この話をもう少し具体的にします。
包装の変更やその対応は、明日からすぐというわけにはいかないです。 2030年をゴールとして見たとき、2026年、2027年、2028年、2029年に何をしておけばいいのか?
最終回では、2030年から逆算した包装見直しのマイルストーンを考えてみます。
このシリーズの内容をまとめて読みたい方は、こちらの特集ページもあわせてどうぞ。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
まだ何も決まっていない段階でも、相談できます。
※ 大青鉄工の相談窓口ページへジャンプします。
