機械の相談を受けるとき、ボクがよく聞く質問があります。 「容器には何をつかってますか?」
こんにちは。
大阪・柏原市で、現場に合わせたブリスター包装機づくりをしている、ブリスターパック・ラボのけたろーです。 ここでは、ブリスター包装や周辺工程のことをできるだけわかりやすく書いています。
さて、今回の話題は…
PET種別を、機械屋目線で整理する
ブリスター包装機を導入したい。
うまくシールできない。
なぜか不良が出る。
そんな相談の入り口で、「現在、使っているPETの種類は何ですか?」と確認することがあります。
真空成型屋さんは、成形のしやすさや、コストという観点でPETを選ぶ。 一方、ボクら機械屋は、溶着が安定するかという観点でPETを見ます。
溶着タイプのブリスターに明るい真空成型屋さんなら、あまり心配しなくていいトピックなのかもしれないのだけど、同じPETでも、種類が違えば、溶着工程に差がでてくるんです。
それを知らずに、容器を入れてしまうと、『なんで?』ということが起きる。
PETの特性とブリスター包装への親和性
溶着タイプのブリスター包装で扱いやすいかどうか ——PETの種類別に整理するとこんな感じになります。
| PET種別 | 特性 | 溶着のしやすさ | 機械屋からの評価 |
|---|---|---|---|
| G-PET | 非晶性。透明性と溶着安定性を両立しやすい | ◎ | 標準候補。条件が出しやすい |
| A-PET | 急冷で非晶化。ブリスター用途で広く使われる | ◎ | 標準候補。まずこれから試したい |
| C-PET | 結晶性が高く耐熱性あり | △ | 溶着条件が出にくい。条件出しに時間がかかる |
| 再生PET | 原料由来のばらつきあり | △ | ロットごとに挙動が変わりやすい |
| バイオ系PET | 原料設計が標準PETと異なる | △ | 試作必須。標準条件がそのまま使えないことが多い |
溶着タイプの包装機を安定させたいなら、まずG-PETかA-PETから検討することを勧めてます。 G-PETか、A-PETを用いることは、溶着タイプでのブリスター包装では、半ば常識的なことがらです。
それぞれの特性を、もう少し詳しく。
もう少し、詳しく特性を説明しますね。
G-PET・A-PET ——扱いやすい理由

いわゆる、バージンの原料を使ったPETです。
どちらも急冷によって非晶性の状態を保っているPETになります。 分子構造が比較的そろっているため、熱を加えたときの軟化が読みやすいという特徴があります。
「この温度・この圧力・この時間」という条件が安定しやすく、機械側の調整が最もシンプルに済みます。 はじめてブリスター包装をされる現場には、この2種類のどちらかを強く勧めている。
C-PET ——溶着用途では注意が必要
耐熱性が高く、電子レンジ対応などの用途には適しているPETです。 ただし、結晶性が高いぶん、溶着時の挙動が一定になりにくいという特性をもっています。
シール強度のばらつきが出やすく、機械側でカバーしようとすると条件出しに相当な手間がかかるという一面もあり、「耐熱性が要らない用途」で選ぶ理由はほとんどありません。
再生PET ——ロット管理が鍵
環境対応として採用が増えている素材です。 機械屋目線では最も扱いが難しいPETのひとつです。
再生であるが故、原料由来のばらつき、分子量の低下、異物混入——これらがシール強度の不安定につながりやすい。 同じ条件で動かしていても、ロットが変わると結果が変わってしまう。
ロット管理と、条件の幅出しをセットで考える必要があります。
バイオ系PET ——試作なしで量産に入らない
植物由来原料を使うバイオ系PETは、原料設計や熱履歴が標準PETと異なるため、溶け方や接着性がずれるケースがあります。 「PETだから同じ条件でいい」は通用しないケースが多いです。 量産前に必ず試作と条件確認を行うのが無難です。
台紙側のホットメルトとの相性も確認すること。
溶着タイプのブリスターでは、PETの種類だけでなく、台紙に塗布されているホットメルト(接着剤)との相性が重要になります。
| ホットメルト種 | 特徴 | PETとの相性 |
|---|---|---|
| EVA系 | 包装用途で標準的。扱いやすい | ◎ まず検討する候補 |
| ポリエステル系 | PETへの接着性が高い | ◎ PET容器には特に有力 |
| オレフィン系 | 難接着材料向け。透明性あり | ○ 条件出し前提 |
| ポリアミド系 | 耐熱性が高い | ○ 高温条件向け |
| PUR系 | 反応型で強い接着力 | ○ 特殊条件向け |
PETの種類が決まったら、台紙側のホットメルトとの組み合わせも必ず確認してほしいトピックです。 少し加えると、ホットメルトと台紙に使用する印刷インクの関係も考察すべき点です。
ここがずれていると、いくら機械の条件を調整してもシール強度が安定しないことがあります。
石油依存の問題と、台紙二重化という選択。

PETはナフサを原料とする石油由来の素材です。
原油価格の変動や調達リスクは、包装資材の安定調達に直接影響してきます。 今回のホルムズ海峡の一件で、その問題は製造現場では現実になりました。
ホルムズ海峡での問題が解決できたとしても、輸入に頼っている以上、完全に解消されるわけではないと考えます。 その一方で、環境規制の動きも加速しています。
EU包装規制(PPWR)をはじめ、包装に関する環境規制の動きは今後さらに強まっていくことが予想されます。 PPWRの骨子は、単なる「プラスチック削減」ではありません。
プラスチックを使う場合には、リサイクル可能な設計であること、そして実際にリサイクルできる環境を担保することも求められています。
削減とリサイクル性、その両方を包装設計に組み込むという考え方が、これからの標準になっていくと考えます。
これからの包装設計は、リサイクル性が起点になる。
これからの潮流を加味するなら、シール不良を抑えたいからと、安易にG-PETやA-PETを選ぶというのは少し考える必要があるかもしれません。 でも、かといって、再生PETやバイオ系の採用は、溶着自体が成立しない可能性もあります。
こうした背景から注目されているのが、
「プラスチックの使用量を抑えながら、分離しやすく、リサイクルしやすい包装をつくる」
という設計の考え方です。 そのひとつの選択肢が、台紙の二重化です。
台紙二重化とは、『台紙ーPETー台紙』の構成により、台紙同士を溶着させることで、PETを分離しやすく構造を指します。 ダブルカードともいわれています。
台紙二重化による環境への最善解
具体的には、こういった場面で有効になります。
- 溶着に不向きなPETを使わざるを得ないとき
再生PETやバイオ系PETへの切り替えを検討している場合、容器側の溶着性が標準PETより落ちる可能性があります。二重化では、台紙とPETは直接溶着を行わないため、PET素材の特性を気にすることなく扱えます。 - プラスチック使用量を抑えたいとき
ブリスター容器を薄肉化してプラ量を減らしながら、台紙側の強度で全体の包装性能を維持するアプローチが取れます。 - 石油由来素材への依存を段階的に減らしたいとき
容器素材を環境対応素材に切り替える過渡期に、台紙側で品質を担保しながら移行できます。
一方で、台紙二重化はコストと手間が増える面もあります。
うがった見方をするなら、『安価で、見栄えよく』というポリシーの元、使い続けられてきたブリスター包装が今の結果を招いてしまったともいえます。 それを考えるなら、「使いたい素材を使いながら、品質を確保する」という現実的な環境対策への選択肢として検討する価値は十分にあります。
台紙二重化の詳細については、こちらの記事も参考にしてください。
▶ 台紙二重化とは?
まとめ
溶着タイプのブリスター包装機を安定させるには、PETの選定が起点になります。
ボクら機械屋の目線での結論は、
- G-PET・A-PETが最も扱いやすく、条件が安定しやすい
- C-PETは溶着用途には不向きなケースが多い
- 再生PET・バイオ系PETは条件出しと試作を前提に考える
- どのPETでも、台紙側ホットメルトとの相性確認は必須
- 溶着に不向きな素材を使う場面では、台紙二重化という選択肢がある
ということです。
ブリスター包装が出始めたころの環境と、今の環境は大きく変わっています。 地球環境という視点での考え方は、大きく様変わりしています。
これからの包装への設計は、石油依存の問題や環境規制への対応を考えれば、より高度な選択が求められます。 それに伴い、環境対策の分野においては、今後、さまざまな素材が開発されていくのだとも思います。
ブリスター包装においては、その包装形態におけるマッチングが重要なポイントになるのだと推察しています。 ここで少し振り返りたいのが、溶着タイプのブリスターにおける台紙とPET容器の分離性です。 これは、ずいぶん昔から言われ続けている話題でもあります。
昔以上に環境問題がクローズアップされてきた現代にあって、今一度、この点を見つめなおす時期なのかもしれないですよね。
「どのPETが現場に合うか」
「今使っている容器でなぜうまくいかないのか」
「環境対応素材に切り替えたいが不安がある」
そういった相談は、いつでも受け付けています。 まずは現状を聞かせてください。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
まだ何も決まっていない段階でも、相談できます。
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