「生産数が多いので、もっとたくさん取れるようにしたい」 そんな相談を受けることがあります。
こんにちは。
大阪・柏原市で、現場に合わせたブリスター包装機づくりをしている、ブリスターパック・ラボのけたろーです。 ここでは、ブリスター包装や周辺工程のことをできるだけわかりやすく書いています。
さて、今回の話題は…
多数個どりは、是か非か?
話しを聞いていくと、
現状は木型で10個取りをしていて、生産数を増やしたいので、これを15個、20個に増やす必要があると思うんですけど、どうでしょうか?
そんな感じの内容でした。
クライエントさんは、木型での多数個取りが正解だと信じていて、だから、個数を増やせばもっとたくさん作れんじゃないか? という考え方で相談に来られる。
その気持ちは、わからなくもないです。 一度にたくさん処理できるから、そんな風に思うのは自然なんだと思う。
でも、ボクは正直に伝えます。 実は、その方法、かえって効率が落ちますよ。 って。
ブリスター包装で一般的に採用されている木型での多数個取りは、個数が増えるほど現場に見えにくいかたちで負荷がかかっている。 そしてそれは、生産数ではなく不良・調整・人手という形でコストに返ってくる。 …のですよ。
多数個どりを推奨してない理由をお伝えします。
なぜ、一度に扱う個数を増やすと問題が起きるのか?
「一度にたくさんできる」 これは一見すると、効率が良いように思えて、理にかなっているようにも感じますよね。 でも、そこにはちょっとした落とし穴があるんですよ。
熱板が大きくなるほど、熱のムラは避けられない
ブリスター包装はヒートシール(熱溶着)で成立しています。 個数が増えるということは、一度にシールする面積が広くなるということです。
たとえば、ハガキサイズの製品なら、4個取りで約4倍の面積を均一に加熱しなければならないということです。 ・・・これが難しい。
熱板の端と中央付近では、どうしても温度差が出ます。 温度が低い部分はシールが甘くなり、高い部分は溶けすぎる。 熱のムラは、シール不良の直接原因にもなります。
個数を増やすほど、この問題は大きくなるのです。
シール時間が長くなり、台紙が反る

多くの個数を確実にシールしようとすると、熱を長くかけるか、温度を上げるかのどちらかになります。 この時、どちらにしても、台紙への負担が増えるんです。 台紙は長時間の熱にさらされれば、反し、変色するし、強度が落ちる可能性もあります。
「なんか台紙がキレイにシールできない」
「仕上がりが歪んでいる」
こういうトラブルの原因のひとつが、これが起因しています。
容器の中に水がたまる
台紙には、必ず多少の水分が含まれています。 台紙側から熱を加える方式では、台紙の水分が水蒸気になって、容器の内側にこもるという現象が起きます。
個数が多いほど加熱時間は長くなりがちで、その分、容器に水蒸気がこもりやすくなってしまう。 製品に金属製の部品が含まれている場合、これは致命的な問題になり得えます。
こと、船便を使った貿易品の場合、製品に付着した水分で錆が発生するなどの問題が起きやすくなります。 品質を考える上では、問題ですよね。
容器の空気が膨張して、パンパンになる
シール時間が長い場合、容器内の空気が膨張し、容器がパンパンに膨らむという現象が起きます。 この状態では、シール部分に内側から圧力がかかるため、剥離の原因になり得ますし、容器が変形してしまうという事態にも陥ります。
その対策として、溶着部分にわざとスリット(空気穴)を設けて空気を逃がすという方法をとられているところもあります。 でも、それは対処とか、対策であって、根本的な解決にはなってないんです。
起因は、多数個取りでは、確実にシールしようとするほど加熱時間が長くなること。 それにより、容器が膨らんでしまうということです。
また、この状況では、容器の中の製品が長時間にわたって熱にさらされることになるため、内容物への影響としては無視できません。
食品であれば品質への影響、電子部品であれば特性への影響、医療・衛生用品であれば素材への影響。
熱によるダメージが発生しているということです。 ただ単に「溶着できているからOK」で済む話ではないのです。
「溜め」で、作業の流れが止まる

多数個取りでは、数が多くなるほど木型へのセッティングに時間がかかります。 また、短時間で済ませるために、その作業に人を投入するということもあります。 1人より、2人、3人でやった方が早いという理屈です。
また、たくさんセットして、まとめて溶着して、まとめて取り出すという作業の流れの中では、必ず「溜め(滞留)」が発生します。
溜めがあると、次工程の検品や箱詰めにつなげにくくなります。 また、溜まった溶着後の製品をガサッと取り出し、一品一品確認している余裕がなくなって、検品作業も煩雑になってしまう可能性は否めないのです。
個数を増やすことで作業者への負担が増え、人を足さないと回らなくなってしまうというサイクルがうまれます。
これは、個数を増やすことで効率を上げようとした結果が、人を増やすという方向に逆流してしまうパターンなのです。
では、なぜ2〜4個取りなのか
ここからが本題。
ボクが機械を考えるとき、念頭に置いていることがあります。それは、
「人が無理なく扱えるかどうかと、機械への負荷」
この視点で考えると、2個〜4個取りというのは、かなり妥当だと思うんです。
まず、セッティングする際には、例えば2個なら両手の1アクションで済みます。 また、熱源的にもそれほど大きくならず、熱のコントロールもしやすいのです。 つまり、機械的な負荷が少なくて済みます。
例えば、多数個取りの10個を想定したとき、前述したとおり熱源の面積もそれなりに大きくなります。 それに加えて、必要な圧力も増すため、機械構造もそれなりに大きくなるということなのです。
取り出しの面でも、2個~4個くらいなら余裕をもって検品ができ、その後の箱詰めも無理なくできます。
- セットが煩雑にならない
- 取り出しが安定している
- その場で検品できる
- 次工程にスムーズにつなげられる
当然、取り数は製品の大きさや形状によって変わります。 大きな製品なら2個取りまでが理想。 小さな製品なら3〜4個取りが現実的なラインになります。
自動供給を考えるのであれば、安定して供給できるか? ということも重要なポイントになります。 その点を考えると、2~4個が妥当なんです。
人・機械が無理なく扱える範囲を想定して、「何個取り」ということを決める。
というわけです。
「少量・確実・一気通貫」が、結局は速い
ひとつ、整理しておきたいことがあります。
2〜4個取りは、一見すると少ないように感じると思いますし、一度により多くを扱う方が生産量が多そうに見えて、魅力的に思えるのかもしれません。 でも、現場で見てきた実態はこんな感じでした。
- 多数個取りで不良が出れば、その分が無駄になる。
- 調整に時間がかかれば、その分、全体として処理時間が長くなる。
- 人を足せば、コストがかかる。
その一方で、少量を確実にするという方法を考えれば、不良が減り、検品が楽になり、箱詰めまで一気通貫でつながる…。というわけです。
まとめ
多数個取りを全否定したいわけじゃないないんです。 現に、2個でも多数個ですよね。 ただ、理解していただきたいのは、「一度に多く処理できるほどいい、という思い込みで設備の仕様を決めてしまうのは危険だ」ということなんです。
ボクが推奨するのは、こんな感じです。
- 製品サイズと作業者の動きを先に確認する
- 人が無理なく扱える個数から設計を始める
- 目安として2〜4個取りを基本に据える
- 個数より「不良を出さないこと」「流れを止めないこと」を優先する
処理数を確保することも大事なのですけど、まず、現場が止まらず、人が無理なく、品質が安定することの方が、長い目で見たときの生産効率はずっと高い…。 というのが、経験による結論です。
現在の設備や個数設定に迷っている方へ
「何個取りが現場に合っているか」
「今の設備でなぜ不良が出るのか」
こういった相談は、いつでも受け付けています。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
まだ何も決まっていない段階でも、相談できます。
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